「誰もいない日」
スエPロ 様
誰もいない日。誰もいない日とは何だろう。何だかほっとする様な寂しい様な・・ふぁ・・昨晩、遅くまで起きていたのでまだまだ眠い。が、腹時計が空腹を知らせる。起きた方がいいみたいだ。春の日差しは瞼を閉じさせる力があるかの様・・。だが!
「おなかがすいた・・」
一階の食事部屋に行くとやはり誰もいない。
「・・・」
いつもならフランソワーズがいそいそとイワンの為のミルク作りやギルモア博士や僕の食事の用意でバタバタしているのだがまったく物音がしない。「やっぱり僕も行けば良かったな・・」少し後悔した。日本で初めての、医療用クローン人間実験の為、生体学の権威であるギルモア博士が説明会に呼ばれたのだった。その見学にフランソワーズは子連れ、もといイワンと一緒に出掛けたと言う訳だ。
「あれ、コーヒーが切れてる・・あ〜あ・・」
仕方なくTVをつけるともう昼ドラマが始まっていた。お笑い番組を見られなかったのが残念だ。フランソワーズも気をきかして何か作っておいてくれれば良かったのに・・ま、朝早くだから仕方無いか。僕にイワンの世話は大変だと彼を置いていかなかっただけでも幸いだな・・赤ん坊の世話は大変だ・・彼女はそう言う僕に
「将来、任せられないわね・・」
と呟く。さあ?未来は分からない。
「ん、コロネパンだ。」
少し陽気になってきた。大好物なのだ。これを食べて昼メロを見て・・また寝るか。春だから。また眠くなってきた。
「ピンポーン」誰だ?玄関に向かう。ドア越しに聞いてみる。
「どなたですか?」
「あの、私、マリー化粧品の者です。奥様はいらっしゃいませんか?」
・・奥様はいない。
「え〜と、いません。出掛けてるんです。また他の日に来て下さい。」
「あの!パンフレットだけ貰って頂けませんか?奥様に渡して頂けると嬉しいのですが・・」
まあ、それだけならいいか。「ガチャッ」
「あ!」
フランソワーズ?
「はい?」
・・いや、似てるだけだ。・・しかし、似ている・・フランソワーズは元々が優しい日本人女性の微笑みを持っている為かこの人は日本人なだけに不思議と日本人らしさが彼女に似ているのだ。
「・・すみません・・これ。」・・
「あ、すみません。渡しておきますね。」
「あの・・」
「はい?」
「あなたは島村ジョーさんですか?」
「え!?あ、はい、そうですけど?なぜ、僕の名前を?」
「以前、F1レーサーとして活躍なさってたでしょ?私、ファンだったんです。」
・・・・とまどうな・・かなり昔の話だ・・
「きゃ、さむ。」
風が吹いた。春風は冷たく彼女の頬を赤くした。・・
「どうぞ、寒いでしょ?中に入ったら?」
・・入れてしまった・・見ず知らずの女性を・・ファンか・・前にもそう言って・・しばらく付き合って・・よそう、忘れた筈の思い出だ・・
「ごめん・・コーヒーが無くて・・お茶でいいかな?」
「あ、ありがとうございます。」
「・・君、珍しいね、僕の事、知ってるなんて。」
ソファーに腰掛けてる彼女を見てるとほんとにフランソワーズの様だ・・もしかしたらこっちの方がタイプかも・・何て悪い奴だ、僕は。彼女に知られたらどうしよう。
「私、高山琴香と言います。知ってますよ。早かったですもん。音速のクールガイ・・あなたはそう呼ばれてた・・レースも何回か観に行きました。」
「ああ、そうなんだ。」
お茶をこぼさない様にトレーに置いて台所から運び、彼女、琴香さんの前に置く。
「おいしい。」
かわいい子だ。笑顔がとてもいい。僕も自分のファンには弱いのだろうか?こんなにも単純な男だったのだ。
「あなたはいつも取り巻きに囲まれてて・・側に寄れなかった・・」
「そうだったかな・・忘れたよ・・」
そう・・昔の話だ・・
「ご結婚なさったんですね。」
え?まいったな。
「う〜ん、ま、そうだね。」
「お子さんは?」
困ったな・・
「えーと、一人。」
「そうなんだ・・ちょっと残念・・」
「・・」
「奥さんってどんな方ですか?」
君に似てるよ。
「普通だよ。」
「・・優しい?」
「ああ。そうだね。」
「そっか・・」
お茶を飲む姿勢がとてもいい。上品な女性だ。スーツも上品だし。・・もしかしたら凄く若いかも知れない。
「君、いくつ?」
「19です。」
やっぱりね。
「奥様はおいくつ?」・・・
「・・21歳だよ」
「あらそうなんですか?」
彼女の唇のかたちがやけに気になる。フランソワーズがつけない赤いリップだ。19歳にしては大人びてる。
「お部屋の中、暖かいわ。上着脱いでもいいかしら?」
え?
「あ、ああ、どうぞ。」
・・とても困った事に僕は彼女の曲線を意識してしまった。なぜだか、彼女は魅力的だ。
「・・ジョー」
「え?」
「お願い・・今日、少しの時間だけ、あなたの恋人でいさせて・・」
「そんな・・」
彼女の顔が近づく。フランソワーズに似た・・魅力的な唇が僕の唇に触れた時、僕はもう彼女を確かに恋人として抱きしめていた。彼女は淫びに僕の膝に股がり、自分でブラウスのボタンを外していく。僕は早く彼女の肌に触れたくて彼女のくびれた腰から胸元まで手を伸ばす。
「あ・・」
微かな声を出す彼女がたまらず、スカートに手を持っていく。優しく触れた彼女の見えないところは熱くなっていた。
「いっぱい触って。確かめて・・」
見ず知らずの女性・・僕のファン・・この家でしかもこんなところで僕は理性を失って彼女の中に入りたがっている・・もう意識は彼女の虜だ・・彼女の乳房はフランソワーズより小さいが恥ずかしそうに少し震えた仕草がなぜだかそそられる。
彼女の胸に顔を埋め柔らかさを確かめる様に口に頬ばる。
「ああ・・」
下唇を噛んで気持ち良さと嬉しさで声を出すのをこらえている。その声が聞きたくて彼女の下着をおろし、はっきり見える様に顔を近づける。
「恥ずかしい・・」
その声にもっとそそられ大きく足を開かせる。
「ああ・・見えてしまうわ・・」
「見えてるよ。全部・・」
「ああ、そんな・・」
彼女のそこはびっしょり濡れていて、春の日差しが彼女のそこを光らせていた。
「お願い・・あたしの中に・・」
頭は真っ白だった。
たた淫びな風が吹いたとしか思えない。夢中で彼女の中で動いていた。強く、弱く、その度に彼女は声を上げてしがみついた。
「もう・・私・・」
とももらした。汗をかいて髪が顔に纏っている。動く度に髪が揺れ、僕は夢の中にいた。夢の中でフランソワーズを抱いていた。夢中で。だが、唇が赤い・・
「君はフランソワーズかい?」
「そうよ。」
愛しい人はなぜこんなに切ない顔をしているのだ?こんなに愛しているのに・・なぜだ?
「悲しいの・・」
「なぜ?」
「あなたは私を・・抱いているから」
「?」
・・・目が覚めた・・長く長く寝ていた気分だ・・淫びな風・・はっとして隣を見る。
「琴香?」
「うう・・ん」
亜麻色の髪・・
「・・おはよう・・ジョー」
「こ、琴・・」
見覚えのある顔、髪、体、匂い・・
「フランソワーズ!」
彼女は裸だ。そしていつも僕に愛された後の様に切なげな瞳・・
「夢か?それとも、これが夢?」
「どうしたの?ジョー?」
亜麻色の髪が乱れている。いとおしさでいっぱいになり、ぎゅっと強く抱きしめる。
「夢じゃない。君は現実だ・・」
「どんな夢を見たの?」
「君の夢だ・・」
「あたしの・・夢?」
そう、あれはフランソワーズだったのだ。・・きっと・・たぶん・・
「フランソワーズ・・君は僕に抱かれた後、なぜそんなに切なげなんだい?」
彼女が微笑む。夢の中の微笑みと一緒だった。
「あなたの恋人であるのが嬉しいからよ・・」
抱きしめて彼女の全身にキスした。
「ああ、だめ、首は・・今日は出掛ける日よ。」
そうだった。今日こそ、彼女は確かに出掛けるのだ。
「クローン人間の実験、良い方向に向かうといいわね。」
「もう少し君を抱いていたい・・見えない所ならいいんだろう?」
乳房にキスする。たっぷりと。
「ああ、だめ、こんな朝早く・・あ・・ジョーどうしたの・・変よ、あなた・・」
もしかしたら・・いや。確かに・・後ろめたいのだろう。キスをしたくて仕方がない。
「あ、ああ・・ジョー。う・・ん・・もし、あたしのクローン人間がいたらどうする?」
クローン人間?・・高山琴香・・赤い口紅・・
「君のクローン人間なんて、夢の世界で十分さ。」
そう・・夢の中で十分さ。夢の中で・・。