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「欲 望」
                                                            きちきち 様


まだ少し肌寒い3月のある日、一人の男がある瀟洒なマンションの前で佇んでいた。その男は遠めでもはっとする程の赤い髪をしており、かなりの長身だった。
「あいつはいるのか・・・?」
さっきから携帯に電話してもつながらず、家に電話しても留守電のテープが虚しく回っただけであった。
しかし、今日は仕事がオフのはずだ。あいつは休みの日は一人で家に篭ることを好んでる。よっぽどの用事がない限り、必ず家にいるはずだ。
「・・・行くか。」
男はマンションに向かって歩き始めた。

マンションはオートロックになっていた。男はエントランスらしき小さなホールをぬけると、自動ドアの左横にある数字のかかれたボタンがついた台に近づき、慣れた手つきでボタンを順に押していく。番号ボタンを押し終えた男は、上を見上げる。そこにはTVカメラがあった。男はそれを睨みながらしばらく待った。
やがて、番号ボタンの上にあるスピーカーから訊き慣れた男の声が流れてきた。
「やあ。何の用?」
「・・・開けろよ。話がある。」
「今、忙しいんだけどな・・・。」
「すぐに終わる。開けろよ。」
「強引だな。まあ、いいか。」
声がふっと消えて、自動ドアが音もなく開く。男は中に入っていった。

男はエレベーターを降りて右にまっすぐ進み、突き当りにある頑丈そうなシルバーがかったグレーのドアの前で止まった。ドアの周りはちり一つなく、その表札には名前がかかれていない。まるでどこかのモデルルームのようだ。
が、男はインターホンを鳴らした。
・・・
・・・
くそっ、どれだけ待たせやがる!
イライラとして、ドンッとドアに拳をぶつける。それでも中からはなんの返答もない。男はもう一度インターホンを鳴らし、
「いい加減に出てきやがれ、ジョー!!」
と叫んで、もう一度拳をぶつけようとしていた時、ドアが静かに開けられた。
「遅い!!」
「だから、忙しいんだよ・・・。」
そこには、憂いを秘めた瞳にけだるそうな顔をした、なんとも艶かしい風情の男が立っていた。
「ジョー、お、お前・・・。」
男はジョーの姿を見て絶句する。
ジョーは白いシャツにジーパンという姿なのだが、その白いシャツの前がはだけていた。そして首筋、胸元にのこる紅いあざ・・・。一目みれば誰であろうと情事の後というのがまるわかりである。
「・・・お楽しみの最中ってわけか。」
「別に、かまわないよ。で、何か用?」
「・・・フランソワーズがこっちに今日来るってよ。」
「え・・。」
ジョーは思わず目を大きく開く。そのおかげでさっきまでの夜の雰囲気を漂わしていたけだるい表情が消えた。
「どうして・・・。」
ほう・・・、こいつにはフランソワーズの名前はテキメンだな。男はおもしろそうにジョーの様子を観察する。
「お前が悪いのさ。せっかくフランソワーズが研究所に来たというのに、お前ときたらフランソワーズを迎えに行ったのはいいが、
その次の日には研究所を飛び出しちまうんだもんな。」
「・・・。」
「なんでも次の公演が決まってあさってには帰らないといけないんだとよ。
だからそれまでに一度お前の様子を見にいきたいんだと。」
「それで、いつ来るんだ?」
恐る恐るジョーは訊いた。
「フランソワーズは『ジョー、ちゃんと食べているのかしら』って言っていたから、なんか作りにくるんじゃねえのか。」
と、ジョーの問をはぐらかすかのようにジェットは勝手に話を進めた。
「だから!!いつ来るんだよ、ジェット!!」
ジョーの顔は高潮し、ジェットの両肩を掴んでいる。
やれやれ、という感じでジェットは答えた。
「今日の夕方だってよ。」
「!!」
今はもう3時過ぎである。
「なんでもっと早く教えてくれなかったんだよ!!」
「だから、俺が電話してやってたのに。どうせ着信履歴もみてねえんだろ?ならお前が悪い。自業自得じゃねえか。」
ジェットの文句に耳を貸さず、ジョーは早口で
「ジェット、フランソワーズに・・・」
と言いかけた時、
「私がどうかした?」
いつもの穏やかな、そして美しい声が聞こえてきた。
「フランソワーズ!!」
ジョーはジェットの向こう側を見つめて固まってしまった。ジェットもジョーの視線の先を追って振り返った。そこには、ジョーが今一番会いたくない美しい女、フランソワーズが立っていた。フランソワーズは固い表情でじっと、ジョーのはだけた姿を見つめていた。
フランソワーズは桜の花びらを連想させる淡い色のワンピーズを着ていた。彼女のぬけるように白い肌によく似合っている。
手にはスーパーの袋をぶら下げている。どうやらジェットが言っていたとおり、料理を作りに来たらしい。
などと、呆然とした頭の中でジョーはそんなことを考えていた。そんなジョーの様子を見て、フランソワーズは顔を伏せて
「・・・ごめんなさい。余計なこと、よね。」
それだけ悲しそうにつぶやくと、そのまま振り返ってとぼとぼとエレベーターの方へ歩いていった。呆然と彼女の後姿を見送っていたジョーに、ジェットが
「おい、いいのかよ。」
と言いながらジョーのわき腹を肘でつつく。その振動でジョーははっとして、はだけたシャツを直しながらあわててフランソワーズの後を追った。


ジェットはジョーがフランソワーズを追いかけていった後、彼のマンションに入っていった。彼はこのマンションに頻繁に出入りしていた。それでこの家の間取りはおろか、ジョーが普段居住している部屋も分かっていた。迷わずよく片付けられたリビングまですすんでいき、リビングの左側の壁にあるドアの前に立ってノックした。
「・・・はい?」
若い女の声がした。
「よう、わりいんだけど、帰ってくれねえか・・・?」
中でなにかが動く気配がして、ドアが開けられた。ジェットの目の前には、膝よりも短い赤いタイトスカートに黒のセーターを着た、メイクの派手な女が呆然として立っていた。
そこそこいけてるじゃねえか。
などと心の中で呟きながらジェットは女の前からどいた。女は、ジェットが目の前からどいたことで我に返ったようで、そのまま彼のほうを一瞥もなく去っていった。女がいた部屋を覗くと、中は綺麗に整頓されていた。情事の後を思わせるようなものは何もなかった。丁度、後片付けをしていたらしい。女は見かけに寄らず家庭的な女だったらしい。


ジェットがここまでジョーに心を砕くのは理由がある。
ジェットとジョーは、サイボーグ戦士にされる前は2人共、俗にいう不良という存在だった。親の顔も知らない2人は、自分達と同じ年頃の子供が母親や父親らしき人と一緒にいるところをみかけると、とてもいたたまれなかった。うらやましかった。だがそんな感情は自分を卑屈にさせるように感じた。それはとても嫌なことだった。今まで自分1人で生きてきたことを否定したくなかった。だから、そんな感情は必要ないようにしたかった。いや、必要ないように感じる為にもっと強くなりたかった。その為に選んだ方法が町の片隅で肩をいからせて生きることだった。

しかしその結果は・・・ますます孤独に陥っただけだった。だがそんなジェットには同じ孤独感を持つ不良仲間達がいた。まったくの孤独という訳ではなかった。しかし、日本人からかけ離れた容姿を持つハーフのジョーには誰も近寄らなかった。彼の容姿は、周りから完全に浮いていた。それが周囲にいる人間を近寄りがたい気持ちにさせたのだった。その為、ジョーはサイボーグ戦士になるまでずっと孤独の中に住んでいたのである。

初めてジョーに出会った時は、あまりにも暗い闇を思わせる瞳に愕然とした。ジョー自身は華やかな容姿を持っているにもかかわらず、そこから発せられる雰囲気はあまりにもかけ離れたものだった。ジョーがもつ雰囲気とは、果てしない孤独、寂しさからくるものだった。
こいつ、一体どういう風に生きてきたんだ・・?
陽気なジェットですら不安にさせるジョーの雰囲気は、行動を共にする間にいつしかジェットの心に同情すら沸き起こすようになっていった。
ジョーのやつ、一度も生きているのが楽しいと思ったことがないんじゃないか?
ふと頭の中によぎる疑問は、ジョーの生い立ちを彼自身から語られることによって、確信に変わった。ジェットは不良仲間達の面倒を見ていた親分肌の男であった。そんな彼は、闇の中で一人ぽつねんと立ち尽くすジョーを放っとけなかった。
気が付くとあれこれと気にかけるようになっていった。
そのおかげで段々とジョーについて面倒なことが分かってきた。

ジョーの華やかな容姿は、とにかくやたらと女性を惹きつける。要はやたらともてるということだ。しかも、当人は来るもの拒まずでその好意を素直に受け入れる。当然、女がらみのトラブルが後をたたない・・・と思いきや、最初ジョーに一方的に熱をあげていた女性はいつしか、彼が自分を見ていないことを見抜き、必ず最後には立ち去ってしまうので(しかも短期間で)大きなトラブルにはならなかった。
(まれに幾人かと付き合うはめになって、もめることもあったのだが、何故か相手の女性達は皆気まずそうにして去っていくのであった。)
ジョーがもう少し自制してくれたらいいのだが、当人は今まで一人で生きてきてずっと側にいてくれる人を求めていた。その為、側に来てくれる人間に対しては誰でも受け入れてしまう。
その上彼はSEXに対しても、相手がしたいんなら、かまわないという相手本位の感覚なので、熱をあげる女性とは必ずそういう関係になっていた。
最初は、ジョーのやつもそのうち本当に好きになるかもしれない などと思って静観していたのだが、どうやらジョーは一度も相手の女性に対して愛情が沸くことはなかったらしい。
ジョーとジェットはレーサーという職柄、とにかくよく女性からお声が掛かる。ジェットもそこそこ付き合ったりはしているのだが、彼はちゃんと自分が愛情を抱けそうな女性を選んでいた。ジョーの方は数あるお誘いから、一番最初に声をかけてきた女性と付き合っていたようだ。
こいつの恋愛感情はどこにあるんだよ!?
ジェットはジョーが一生このままなんじゃないかと危惧した。
女性に対しては相変わらずなジョーだったが、ジェットは最近になって彼の闇を思わせる瞳に輝きが見える時があることに気が付いた。その眼の輝きが、ジョーの雰囲気を一瞬でも柔らかく暖かいものに変えていた。ジェットがジョーの行動をそれとなく注意してみていると、そのおおよその原因は分かってきた。
ジョーはフランソワーズが側にいると嬉しそうに彼女に話し掛ける。瞳の輝きはその時に現れるのであった。
そのことから推察するにジョーはどうやら同じサイボーグ仲間のフランソワーズに惚れているらしい。戦闘中でもよく観察していると、彼は率先してどんな時も索敵能力しかもたない彼女を助けていた。最初それはジョーの優しさからくるものだと思っていたのだが、ジョー自身が怪我を負っている時でも傷ついた体を引きずりながら、彼女を助けに行っているのを見ていると、とても優しさだけからくるものとは思われなかった。
フランソワーズのほうも様子を見る限りどうやらまんざらでもないようだ。
こいつはいい感じじゃねえか!!このままうまくくっついてくれれば、ジョーのやつもちっとは幸福感ってやつを
感じるようになるかもしれねえ。
ジェットは今はジョーにも生きていてよかった、生きることは楽しいといえるようになって欲しいと思うようになっていた。
よしこのまま時間がたてば、何れは・・・。
と呑気に構えていたのがいけなかった。
ジョーといえば、フランソワーズにそれとなく接近しているものの、肝心の気持ちとやらを伝えるのは苦手らしく、彼女に何も言わないままだった。また、フランソワーズも控えめな性格の為、自分から積極的に告白する というようなことはなかった。傍から見ていてじれったい2人であった。
こりゃ、一肌ぬいでやらねえと・・・。
と思っていた矢先の出来事がこれだったのだ。
「これで後はジョー次第ってなわけだ。」
うまくいって欲しいと願いながらジェットはジョーの家を後にすることにした。

ジョーはエレベーターの前に行ったのだが、すでにフランソワーズの姿はなかった。エレベーターは1階に降りていた。ジョーはエレベーターの横にある階段を駆け降りた。1階に着き、ジョーはフランソワーズを探しにマンションから外に出た。マンションの外を見回すと、前方に亜麻色の髪をした寂しそうな後姿が見えた。
ジョーは駆けていき、フランソワーズの前に立った。フランソワーズは俯いていたので顔の表情が分からなかった。
「フランソワーズ・・・ジェットから聞いたよ。僕を心配して来てくれたんだよね・・・?」
「・・・」
フランソワーズは黙ってジョーの側をすり抜けて走り出した。一瞬あっけにとられたジョーだが、素早く彼女の腕を掴んだ。
「フランソワーズ!!」
「・・・放して。私帰るの。」
「そういうわけにはいかないよ。」
「あの女の人、放ってていいの?」
どうやら、部屋の中を透視したようだった。
ジョーは心の中でしまった と思いながらどう答えようか思案していた時、ゆっくりとフランソワーズが面を上げた。
フランソワーズの澄んだ湖みたいな瞳からは涙が溢れていた。こんなに悲しそうなフランソワーズの瞳は初めて見た。ジョーの胸が痛んだ。
「・・いいんだ。彼女とは、そんな関係じゃない。」
「そんな関係じゃないって・・・でも彼女は裸であなたのベットに寝ていたわ!!」
フランソワーズは涙で溢れた瞳でジョーを睨んだ。ジョーは睨んでいる彼女の瞳から逸らすことが出来なかった。息を呑むほど美しかった。そんな彼女にみとれていた。
「!!」
ジョーの視線をふっと逸らしたフランソワーズが今度は固まった。ジョーの後ろの何かを見つめている。ジョーも振り返る。そこには、さっきジョーの部屋にいた女がいた。女は2人を無視してそのまま通り過ぎた。フランソワーズはその様子を唖然として見送っていた。
「よう、どうした?」
今度は聞きなれた陽気な声が聞こえてきた。
「こんな所でなにやってんだよ。中に入って話しろよ。フランソワーズ、ジョーに料理作りに来たんだろ?さっさと作ってやれよ。こいつ、きっとろくなもん食べてねえぜ。」
さあさあ、とジェットは2人を引っ張ってジョーの家まで連れて行った。
ジョーの家のリビングにつくと、ぎこちない雰囲気の2人に向かって
「そんじゃ、俺は帰るぜ。」
と何気なく言ってジェットは立ち去ろうとした。そんな彼を2人は引きとめようとしたが、
「2人の問題だろ?後はお前らちゃんと話し合えよ。」
と言い残してジェットは立ち去ってしまった。
ジェットが立ち去った後、ジョーとフランソワーズはお互い顔を伏せて並んで立っていた。気まずい雰囲気がリビングを占領していて2人共、話を切り出せなかった。フランソワーズはさっきの彼女との関係をはっきりジョーの口から聞きたかった。本当のことを。
フランソワーズはジョーに対して、仲間以上の感情を持っていた。自分ではそれをほのかな恋心だと思っていた。もしかしたら、恋に恋しているのかもしれない。一緒に戦っている時はそう思っていた。自分でも本物の恋なのか決めかねていた。いや、それ以上考えるゆとりなどあの時は全くなかった。平和が訪れ、自分のことをやっと考える時間が持てるようになると、まず最初に考えたのは彼のことだった。
ジョーと一緒にいたい。
だが思っていても口にはだせなかった。
フランソワーズはしかたなく自分の故郷であるフランスへ帰ることにした。そこでサイボーグにされる前に夢見ていた、プリマドンナを目指すことにしたのだった。
しかしつらい練習を乗り切り、見事にプリマドンナになり人々の賞賛を浴びても、フランソワーズの心は満たされなかった。心の空いた部分にはジョーのことを思う気持ちが常にあった。ジョーから遠く離れたフランスで厳しい練習に明け暮れた時でも、彼のことを思わない日は一日もなかった。
最初は離れていてもジョーのことを思うと、心が暖かく感じてそれだけで幸せだった。だがジョーを一方的に思う気持ちは、徐々に彼女の心をつらく寂しいものに変えていった。その寂しい心はバレエにもあらわれだした。どんなに楽しい場面でも、フランソワーズが舞うと物悲しくなってしまうのだった。
このままではプリマドンナとしてやっていけなくなる。そう考えたフランソワーズは、彼のところに行って自分の気持ちを確認しようと思ったのだ。
どんな答えでもいい。私の思いをぶつけてはっきりさせよう。
玉砕覚悟を決めてきたつもりだったが、さっきのジョーの姿を見た途端、フランソワーズの心は張り裂けそうになった。思わず普段は使わないようにしている「透視」で見てしまった。決定的だった。
私はここにいてはいけない。
とっさにそう思い、ジョーのマンションを後にしたのであった。フランソワーズの心の中は、真っ暗だった。フランソワーズはその暗闇に吸い込まれそうな感覚を抱いたまま、ただひたすらマンションから離れようとしていた。
そんな時、彼が追いかけてきてくれたのだ。
ジョーに対して怒りを露にしながらも、心の中では嬉しかった。もしかしたら・・・という思いは真っ暗だった心の中に希望の光すら射したように感じた。フランソワーズはせっかく戻ってきつつある希望の光を消したくなかった。さっき言ったことは本当だと彼の口からもう一度聞きたかった。

ジョーは静かにフランソワーズを見つめた。
彼女は俯いて何か考えているようにみえる。さっきの光景がまだ頭に残っているのだろうか。
なんて言えばいい?今この状態で僕の本当の気持ちを彼女に告げても心に伝わらないだろう。ジョーは初めて出合った時からフランソワーズを見ていた。最初はただあまりの美しさに見惚れていた。
が、次第に彼女の言葉に耳をとられ、仕草に目を奪われていった。ジョーはフランソワーズという引力にひかれるかのように彼女の側に近づいていた。お互いの距離が近づくにつれ、ジョーのフランソワーズへの思いは増した。
増した思いはやがて欲望へと変貌していた。いつしかジョーは彼女が欲しくなっていた。己のものにしたかった。いっそのこと好きだと告白して、己のものにしてしまえばいい と思うこともあった。
だが、その後彼女が自分を拒絶するのではないか という危惧がジョーにはあった。フランソワーズに拒絶されたら二度と彼女の前に出られないだろう。彼女の言葉を聞くことや仕草を見ることが出来なくなってしまう。それはジョーにとってはつらいことだった。
だが彼の欲望はそんなことで消えるはずもなかった。むしろ時がたつにつれ、この欲望は抑えきれなくなってきた。だから、今の2人っきりでいる状態は彼にとっては大変危険なことだった。いつ何時、欲望のたががはずれるかわからない。
ジョーは心の中でずっと葛藤していた。

ふいにフランソワーズが俯いたままゆっくりと話し始めた。
「ジョー、さっきの人と付き合っているの?」
「いいや。」
「なら、どうして彼女はあなたのベットに裸で・・・。」
フランソワーズの澄んだ青い瞳から大粒の涙がぽとり、と白い頬を伝って床に零れ落ちた。
フランソワーズは大きな青い瞳を潤ませて彼を見つめていた。頬には涙の後がくっきりとついていた。しかし、美しかった。今彼女は自分を思って泣いている。愛しい。どうしても欲しい。
ジョーの胸の内に一気に熱い思いが込み上げてきて、その瞬間彼はフランソワーズを抱きしめていた。
「!!」
いきなり抱きすくめられたフランソワーズは、ジョーの腕の中でとまどっていた。
ジョーは腕の中の彼女が自分を拒絶しないのを見て、フランソワーズにそっとキスをした。そして彼女の顔を胸に抱き寄せて優しくフランソワーズに囁いた。
「フランソワーズ、僕は君が好きなんだ。ずっと、君を見ていた。」
フランソワーズは、はっとした。これこそ自分が一番望んでいたことだった。フランソワーズの胸がときめく。
しかし、すぐにさっき見た光景が蘇えり、ときめきが消える。あの光景をどうしても忘れたかった。忘れさせて欲しかった。
フランソワーズはジョーにすがるような気持ちで再び訊いた。
「・・・彼女とはどういう関係なの?」
「彼女は・・・ただの僕のファンだ。ただそれだけだよ。」
ところがジョーの言葉は彼女を逆上させただけだった。
「それだけ?!それだけなのに彼女は裸でベットにいて、あなたはキスマークをつけられたの?!」
フランソワーズは彼の胸を突き放そうとした。だが、ジョーはそうさせなかった。
ここで逃がせば本当に二度と彼女は僕の前から立ち去ってしまう。ジョーは彼女を抱く手に力を込め、逃がさないようにした。
「放して!!」
「嫌だ」
「私のことを好きだと言いながら、どうして他の女の人とそんなことができるの!?」
ジョーは暴れるフランソワーズをしっかり抱きしめながら低い声で言った。
「それは、君を好きな気持ちを抑えきれないからだよ。」
フランソワーズは思わず暴れるのをやめてジョーを見上げる。
「?意味がわからないわ。何を言っているの?」
「だから・・・現実には手に入らない君の代わりだって言ってるんだ!」
ジョーはフランソワーズの驚いた美しい顔を見つめながら低く唸るように叫んだ。ジョーの言葉に混乱するフランソワーズ。その隙をついてジョーは彼女を抱き上げ、寝室に連れて行った。
ジョーはフランソワーズをベットの上にそっと横たえた。
あの裸の女がいたベットだとフランソワーズは思い出した。フランソワーズは起き上がろうとするが、ジョーに軽く押しとどめられた。
「嫌!」
フランソワーズはジョーに向かって怒りを露にキッと睨みつけた。
「あなたは、一体誰が好きなの?それとも抱かせてくれるなら誰でもいいの?私はそんな女じゃないわ!!」
「好きなのは、君だけだ!!」
フランソワーズはジョーの怒りを含んだ大声にびくっと体を震わせた。ジョーはさらに苦しそうに続ける。
「・・・君がそんな女じゃないから・・余計に・・・他の女を抱くしかないんじゃないか!」
そんなジョーを見ていたフランソワーズは落ち着きを取り戻したようだった。ジョーから視線をそらせると
「・・・今日は帰るわ。この手をどけて・・・。」
呟くように言った。ジョーは動揺した。彼にはその言葉が自分に対する嫌悪感に溢れているように感じた。
「・・・。」
フランソワーズは沈黙しているジョーの顔を見た。彼の瞳がすっと暗くなるのをフランソワーズは初めて見た。彼が自分の知っている人ではないような感じがしてフランソワーズは怯えた。
「ジョー、私、帰るわ。」
フランソワーズは怯える心を奮い立たせながらもう一度ゆっくりとジョーに向かって言った。
だが、その言葉は彼には届かなかったようだ。
いきなりジョーはフランソワーズの両手首を、彼女の頭の上で片手で抑え、体の上にのしかかった。そして空いた手で彼女の顔を自分のほうに向かせて、強引にキスをした。
「!!」
フランソワーズの口の中にジョーの舌が侵入してきた。口内で逃げようとしたが彼の舌に捉えられ、絡ませられた。と、同時に唾液も注ぎ込まれた。フランソワーズはそれを全て飲み干すしかなかった。やがて長いディープキスから開放されたものの、フランソワーズは初めての体験で放心状態に陥っていたため、ジョーにされるがままになっていた。
ジョーの手がフランソワーズの胸を服の上から愛撫し始めた。しばらくして胸の上にあった手はワンピースのファスナーを下ろしにいった。ジョーはフランソワーズのワンピースを脱がせ、彼女の胸をカバーしている邪魔なブラジャーをはぎとり、ショーツを足首から引き抜いた。
ジョーの目の前にフランソワーズの美しく均整のとれた裸体が現れた。
これがフランソワーズの・・・。ジョーはしばらく彼女の裸体をゆっくりと眺めていた。それから彼も自分の服を脱いでいった。
自分が本当に欲していたもの、手に入るわけがないと諦めかけていたものが今彼の手の届くところにあった。
期待と喜びに胸を膨らませ、再びジョーはフランソワーズに覆い被さった。ジョーは夢中で彼女の豊かな乳房を揉みしだいた。そして桜の蕾を思わせる乳首をやさしく吸った。
その時フランソワーズの全身に軽い電気が走り、気が付くと勝手に声がでていた。
「あん」
正気に戻ったフランソワーズはなんとかジョーの愛撫から逃れようと身を捩ろうとするのだが、ジョーが逃がしてくれるはずがなかった。
ジョーはフランソワーズの声に興奮したのか、乳房と乳首にますます愛撫を加えていく。
次第にフランソワーズの白い肌は興奮の為に朱に染まり、口からは艶っぽい喘ぎ声が出てきた。
「んん、は・・ああん!!」
ジョーは片方の乳房を揉み、もう片方は丹念に乳首を舐めあげ、そっと噛んだ。2つの刺激が全身を走り、フランソワーズの体はビクンと跳ね上がった。
しばらく両方の乳房へ愛撫を続けた後、ジョーは体をずらし、フランソワーズの秘唇に触れようとした。
しかし、そこはフランソワーズの膝でブロックされていた。彼女は膝を立てて秘唇を守っていた。
「ジョー、もうやめて・・・」
「何を今更。こうなったのは君のせいだ。」
ジョーはフランソワーズの膝の間に手を入れ、力を入れて左右に押し開き、その間に自分の体を潜り込ませた。
ジョーはフランソワーズの秘唇を見つめた。そこはまだ恥じらいを感じさせるピンク色をしていた。
「綺麗だ」
羞恥の余り頬を染めてフランソワーズは顔をそむけた。ジョーはそっと指で秘唇に触れた。
「あっ・・」
秘唇からは愛液がこぼれていた。彼の指が愛液で濡れた。その愛液を今度は唇と舌で味わった。そして今度は割れ目に沿ってゆっくりと舐め上げた。
「ひゃあ・・!」
ジョーは、フランソワーズの反応を楽しむかのように、激しく舐めまわした。
「んん!あ、あふ、や、やああ・・・!!」
フランソワーズは腰を振って逃れようとした。しかし、ジョーにしっかりと腰を抱きかかえられ、逃れられなかった。やがて、ジョーの舌はフランソワーズの一番敏感な蕾を捉えた。
「い、いやあ・・・!や、やめて・・・」
ジョーは蕾に目標を絞って執拗に攻めると、フランソワーズは面白いぐらいに腰をひくつかせた。
「ひゃああ・・!!あぁぁぁぁっ!」
フランソワーズは大きく背を反らすと、全身から一気に力が抜けぐったりとベットに沈み込んだ。
ジョー自身は既に熱く脈打っていた。彼は己自身を彼女の秘唇に当てた。
秘唇は固く閉じられていた。ジョーはそれを指でこじ開け、挿入した。
「ああっ・・、い、痛い!!痛いわ!やめて、お願い!」
ぐったりしていたフランソワーズは悲鳴をあげた。
「もう少しの辛抱だから・・・」
ジョーは、ゆっくりと奥まで進めた。彼女の中に彼が全て入った。やっと、今まで欲しくてしかたなかったものを手にいれた。ジョーの心に満足感が広がった。
彼女の中は柔らかく暖かい。その中には今彼自身が包まれている。ジョーはゆっくりと腰を動かし始めた。
「い、いや、お願い、やめて・・」
痛みの余りフランソワーズはしゃくりあげる。ジョーはそれを見てフランソワーズに優しくキスをし、
「やっとひとつになれたんだ・・・」
恍惚と呟く。彼の動きはとまらない。
次第にフランソワーズも彼が動いているうちに痛みが薄れ、快感に変化してきたらしい。しゃくりあげていたフランソワーズの口から甘い吐息が漏れだした。
「いたあい、あ、あん、ああん、・・・んん」
その声にあわせるようにジョーの腰の動きが激しくなってきた。
「はんっ!あっ、あんん!」
今ではすっかり喘ぎ声に変わっていた。
ジョーは彼女の中からずるり、とペニスを引き抜いた。
「えっ・・」
彼のペニスは彼女の愛液と破瓜の血にまみれていた。
驚くフランソワーズの体を四つんばいにさせ、尻を抱えもう一度彼は挿入した。
ジョーの手にしっかり掴まれているフランソワーズの臀部は柔らかくて、その感触が心地よかった。思わず臀部を撫でまわし、揉み上げた。
「ああっ!あんっ!ひゃあっ!」
臀部を撫でまわされ、突かれる度に甘い声をあげるフランソワーズ。今は自ら快楽の海に沈んでいた。
やがてクライマックスが近づいてきた。臀部にあった手を彼女の胸に廻し、はげしく揉み上げる。ジョーは今、フランソワーズの乳房と膣の感触を両方味わっていた。
「ジョー、わ、わたし・・・あっ、あっ、ああああああ!!!」
彼女の悲鳴にも似た甘い声を聞きながら、ジョーはフランソワーズの中で射精した。

ジョーはぐったりしているフランソワーズを自分の腕にしっかり抱きしめ、汗で濡れた前髪をそっとかきあげてやった。彼の胸に体を預けていたフランソワーズは、とうとうジョーに抱かれてしまったことについて考えていた。
確かにあの女性ともこんなことをしていたのだろう。いや彼女だけではないかもしれない。でもそんなことはどうでもいい。後悔はなかった。彼が他の女性を抱いていたことも今なら許せるような気がした。
フランソワーズは静かにジョーを見つめた。彼はすっかりいつもの優しい光を瞳に宿していた。
2人の間には、もう緊張感はなかった。
「・・ねえ、一つ疑問があるんだけど。」
「なに?」
「どうして私を迎えに来てくれた次の日、ギルモア研究所から出て行ったの?」
「知りたい?」
「ええ」
「なら、約束してくれないか。これからはずっと僕に抱かれるって。」
フランソワーズはまじまじとジョーの顔を見た。
「逆じゃない?あなたこそ、私以外の女の子に手をださないって誓うべきじゃないの?」
やり返されたジョーは、苦笑しながら彼女の疑問に答え始めた。
「・・・僕は、ずっと君を見ていた。君を愛していた。最初はそれだけでいいと思っていた。
だけど君の側にいるうちに、君が欲しくて仕方がなくなったんだ。あのまま側に居続けると歯止めが効かなくなりそうで・・・。
それで飛び出したんだ。」
「・・・なら飛び出す必要はなくなったわね。ジョー、一緒に帰りましょ。ここで他の女の子に手を出されたんじゃたまらないわ。」
「それはないよ。彼女達は所詮僕自身と寝たいんじゃなく、最速F1レーサーというネームバリューと寝たいだけなんだから。研究所ではなかなか君を抱くチャンスがないからね。僕はここにいるよ。」
「・・・じゃあ、次の公演が終わったらここで私も暮らすわ。」
「待ってるよ。」
ジョーはフランソワーズにキスをしようとした。が、彼女は彼の唇を手で塞ぎ、
「私以外の人は抱かないで。」
と青い瞳に力を込めてジョーに言った。ジョーはそんなフランソワーズに
「君に誓うよ。」
と言って唇を塞いでいた手にキスをし、彼女の唇にキスをした。