AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する

「君を抱きしめるために生まれてきたボク」
                                                            杉本 七星 様


「迎えに行く、って言ったのに」
ジョーの第一声。…静かだけれど低い声。
―――怒ってるわ。
フランソワーズはそう思った。

 今夜は珍しく研究所内には誰もいなかった―――夜の時間で眠っているイワンは別として―――ギルモアはスイスでの人工臓器学会に出席しているし、仲間達はそれぞれの母国へ一時的に戻っている。
…だから、今夜は2人きり…の筈だった。
しかし、残念なことにフランソワーズには先約があった。次回公演の共演者に誘われたクラシックコンサート。
その男の顔や名前は雑誌で見て知っている。将来を嘱望された実力派バレエダンサーだとか―――
『これもお仕事だもの、仕方ないわ』
彼女はそう言うが、相手はどうだか判ったものじゃない。今までだって何度も同じようなことがあったのだ。大体、共演するからという理由で、何故2人きりでなければいけない?
『でも…早く帰って来るわ。だって…』
言いかけて、フランソワーズは恥ずかしそうに俯いた。
だって、折角あなたと2人きりなんだもの―――頬を赤く染めて呟くように言う彼女を見て、ジョーも顔が熱くなるのを感じた。
2人きりの、夜。
思わず、迎えに行くと口走っていた。
…ところが、21時を過ぎても連絡がなかった。何も手につかず、ひとり時計と睨み合っていた時に―――彼女が、帰って来たのだった。

外から聞こえた、挨拶代わりの軽快なクラクションの音が、耳に障った。
ジョーが玄関ドアを開けた時、既にその車の姿はなく――潤んだ碧い瞳が、申し訳なさそうに彼を見つめていた。
「ごめんなさい、迎えに来てもらうからってお断りしたんだけど…」
強引にその男は彼女を送ってきた、というワケだ。
苦手なタイプの男だな、とジョーは思った。
「電話しようと思ったんだけど、雰囲気的に出来なかったの」
玄関ホールを抜けてリビングへと向かう彼女の後姿を目で追いながら、ジョーは微かに眉を寄せた。
―――雰囲気?どんな雰囲気だったっていうんだ。電話のひとつくらい、する気になれば充分出来る筈じゃないか。
華奢な背中に心の中で問いかける。
「ジョー、お食事は?」
「いや・・・」
待っていてくれたのだろうか?彼のことだ、そうに違いない。
フランソワーズの胸がチクリと痛んだ。
「じゃあ、すぐ用意しましょ」
ソファにショルダーバッグを置き、彼女はキッチンへ入った。
と―――バッグがパタと倒れ、その拍子に留め金が外れた。
その中から、小振りの箱がチラと顔を覗かせた。
セピア色の包み紙に、金で縁取られた茶のリボンが巻かれている。一度封を解いた形跡があった。
ふと…ジョーはそれに手を伸ばした。
多分―――男からの贈り物だろう。受け取ったその場で開けるように言われたに違いない。
良心が痛むのを感じつつ、彼はそっと箱を開けてみた。…ハッと息を呑む。
……口紅だった。
まるで、血のような赤。禍禍しい程に鮮やかな、淫靡な色。
これが、フランソワーズの唇を彩る―――あの男の、他の男が選んだ色が。
心の中で火花が散った。刹那、頭に血が昇った。

作っておいた鍋を温めていた火を止め、フランソワーズは食器棚に手を伸ばした。
冷蔵庫の残り野菜で拵えた簡単なサラダを盛りつけようとした時、彼女はふと、背後に人の気配を感じた。
「きゃ…」
振り返る間もなく、抱きすくめられた。
もう、ふざけないで、と腕を振り払おうとする彼女の肢体を、ジョーはますます力を込めて抱き締める。ドキリと心臓が音をたてた。
「どうしたの…?」
おずおずと訊ねるフランソワーズの細い顎をこちらへ向かせると、彼は半ば乱暴に唇を重ねた。んっ、とフランソワーズが喉を鳴らす。ジョーの手がワンピースの上から彼女の胸を鷲掴みにしたのだ。
「んっ…あ…」
柔かな唇を味わい、歯列を割って、舌と舌を絡める。
「あ…ジョー…待って」
そのまま、彼はフランソワーズの身体を壁へ押しつけ、自分の方を向かせた。貪るように口づけしながら、彼女のボタンをもどかしそうに外してゆく。
清楚なレースのブラジャーに包まれた、白いたわわなふくらみが露わになった。
パチンとフロントホックを外す。零れそうな乳房がぷるん、と姿を現した。
下からすくうようにして揉みしだく。掌の中で、可憐な桜色の蕾が固くなるのが判った。
「あっ…あんっ…」
スカートの裾をたくし上げ、太股を撫でる。閉じられないように片足を割り込ませてから、ジョーは自分の指を彼女のパンティの中へ忍ばせた。茂みを掻き分け、窪みを探る。既に濡れそぼったそこは、ジョーの指を簡単に受け容れた。
思わず離した唇に、粘ついた唾液の糸が伝う。
「あっ…!ダメ…」
膣内を掻き回すように蠢く彼の指に、フランソワーズはビクンと反応した。
くちゅ、くちゅと音をさせて指を動かしながら、ジョーは彼女の桜色の乳首に吸いついた。
「ああんっ…!」
ガクガクとフランソワーズの身体が震える。
崩れ落ちそうになった彼女を抱きかかえ、ジョーはそっと指を引き抜いた。
てらてらと光る纏わりついた愛液を、彼は舌と唇で拭い、フランソワーズの身体を抱き上げた。
キッチンからリビングに移り、彼女をソファに横たわらせると、Tシャツを脱ぎ捨て…ジーンズのファスナーに手をかけた。

―――僕は、こんなにも自分が嫉妬深いと思わなかった。
ずっと昔、君に求婚する男が現れた時には、僕は君が幸せになれるのなら…と、君の前から姿を消そうと…身を引こうと考えていた。君は僕らよりずっと生身の身体に近い存在だ。だから、充分普通の暮らしを…普通の幸せを手に入れることが出来るから、と。
…でも。
…でも、それは欺瞞だ。綺麗事だった。
本当の僕は君と離れたくなかった。他の男になんて、君を渡したくなかった。
こんなにも、僕は君を求めてる。君のいない世界なんて意味がない。もっともっと、君を感じたい。君を抱きたい。
僕に安らぎを与えてくれる、唯一の存在。僕の一番大切な、愛するひと。
…もう、自分に嘘はつかない。
―――だから、誰にも渡さない。触れさせない。

音もなく、パンティが床に落ちた。
スラリとした脚を大きく開かせ、ジョーはフランソワーズの中心に息づく濡れた花園へ顔を埋めた。溢れる愛液を啜り、舌で愛撫する。
ああ、君の匂いだ。僕だけが知っている君の甘い匂い。
「あっ…」
ジョーの舌の動きに、フランソワーズは切なく甘い声で喘いだ。
次第に広がる快感。身体が火照り、じんじんと痺れてゆく。
こんな、性急なジョーは初めてだった。これでは、まるで…まるで。
普段、仲間達が集まり、談笑するこのリビングで。そのソファでの行為。
―――恥ずかしい…!
「いや…ジョー、こんなところじゃイヤ…!!」
返事の代わりに、彼は愛液の溢れる蜜壷へ舌を差し入れた。
「ああんっ!!」
ビクン、としなやかな肢体が跳ねた。
その際、彼女の指がガラステーブルの何かに触れ、それがカタンと音をたてて倒れた。
―――あ。
共演者の男にプレゼントされた口紅。
どうして…もしかしたら…。
ギシ、とソファが軋んだ。
ジョーの少し潤んだ茶色の瞳が、自分を見下ろしていた。
「あんな口紅…似合わないよ…」
「私の好きな色じゃないの…」
2人、同時に口走っていた。
あっ、と気付く。…互いの顔に、微笑が浮かんだ。
「フランソワーズ…」
囁きとともに、ジョーは大きく開かせた彼女の太股の間に腰を沈めた。
猛々しくそそり立つ自分自身を、グッと彼女の蜜壷へあてがった。
「!!」
ずぶり、とフランソワーズの秘唇が男根を呑み込んだ。
「あっ…はぁっ…!」
かすれた、しかし艶かしい甘い悲鳴がリビングに響いた。
皆の憩いの場でのセックス。数日後には、仲間達が戻ってくる。皆が集い談笑するここで、自分たちは普通の男と女として肉欲に溺れている。…誰がそんなことを想像するだろうか。
「あっ、あっ…はっ…んっ…」
激しいピストン運動。
ぐちゅ、じゅぷ、と淫らな音とともに、ジョーが突き上げる度に、目の前で彼女の豊かな乳房がゆさゆさと揺れる。
「う…」
柔かな肉襞が、分身に纏わりついて強く締めつける。思わずジョーは声を漏らした。
「あっ…もう…!」
うっすらと涙を滲ませて、フランソワーズは身を捩った。たちまち昇りつめ、迎える絶頂。
「ジョー……!!」
唇を噛み締めて、ジョーは、白い喉を反らせる彼女をグン、グンと何度も突き上げた。
―――フランソワーズ…!!君は…僕だけの…!!
どくん、どくん、と…彼女の子宮へとありったけの精を放ち、ジョーはフランソワーズの乳房に突っ伏した。

「カッコ悪いな…口紅に嫉妬するなんて」
「ううん…そんなことない…嬉しかった」
身体を重ねたまま、2人は互いを抱き締めていた。
でも、僕はそんなにプレゼントなんてしないクセにさ…と言うジョーに、フランソワーズは微笑った。
「いいの。…こうしていれば、この先いつか、素敵なプレゼントをあなたから貰えるって判ってるから…」
「えっ…」
頬を染めるフランソワーズを見やり、ジョーは彼女の言葉の意味を理解した。
「…そうだね」
そっと、彼女の下腹部に手を重ねてみる。
「じゃあ…」
「え?」
「もう一回…」
再び、リビングに熱い吐息と甘い喘ぎが聞こえてくるのに、大して時間はかからなかった。