「Dance with me」
トン・・・トトン・・・タタタ・・・タン
夕暮れに街が赤く染まる。人々は、忙しく足を運び、家路を辿る者、仲間と宴へと集う者、愛しい人と甘い時を過ごす者・・・それぞれの生活が、街中にへと溶けていく。
ガラスと鏡で囲まれたフロアからこぼれる音楽と、そしてそれに合わせて跳ねる靴音。夕焼けが、室内にある物すべてを赤く染めている。普段は透き通るような亜麻色の髪も、夕焼け色へと様を変え、不思議な輝きを放つ。
朱色に染まったフランソワーズは、ただひたすら体を躍らせていた。戦いの後には、必ずこうしてバレエを踊るのが、彼女の常となっていた。何かに熱中することで、自分の汚した手を正統化したかった。
「サイボーグだって、人間だわ。たとえ、それが敵だとしても・・・」
罪のない人達と仲間とそして己を守るために、銃を握る、打つ、命中させる。ときには、生身の人間にさえ、その先を向けることさえある。
もう、こうして何年、何度、こんな日々を送っただろうか。
戦うことを余儀なくされた少女は、何時の間にか女へと、その横顔を変えていた。心の中には、その体を受け入れざるを得ない悲しさと、自分がやらなければ、という使命感を抱きながら、一生変わることのない、その肉体を、夢中で宙へと舞わせている。
「そろそろ終わる頃かな?」
赤いスポーツカーは、夕焼けに更に紅さを増し、慌しい生活の中へ移動していた。ハンドルを握るその主は、今や、かなり名の知れたF−1ドライバーとして、世間から注目されている。
彼にとってもまた、マシンのハンドルを握ることは、自らの置かれた現実から逃避できる、唯一のときだった。ゴールを目指し、ひたすら自分の腕と精神に神経を尖らせ走りつづける。そこには何にも変え難い爽快感があった。名声や地位など、そんなものは必要なかった。ただ夢中になれる事が欲しかったのだ。
目的の場所に車を停め、意中の人の待つフロアへと、足を運ばせる。
エレベーターのドアが開くと、かすかに聞こえる協奏曲。
「きっとまた、時も忘れて、夢中になって踊っているのだろう。僕のことなんかも忘れて・・・。」
まさかバレエに嫉妬するわけにもいかず、自分の考えに微かに苦笑し、そっと彼女の城のドアを開けてみる。

何度となく見た彼女の踊る姿。
細い体を力強く跳ね上げ、回り、しならせる。全身に流れる汗もが、宝石のように光り、彼女を輝かせる小道具となる。だが今は、その姿も更に美しさを増し、夕焼けに紅く染まったその空間は、まるで異次元にでも迷い込んだようだ。
切なげに、悲しげに、ときには艶っぽく表情を変えるフランソワーズの、匂い立つような色気に、その肉体の隅々までも知り尽くしているであろう自分でも、まだ知らない彼女の姿があるような気がした。
瞬きする事さえ忘れ、踊り続ける女の姿を凝視する。
タタタン・・・タン・・・タン・・・タン・・・
静かにメロディーが、その終わりを告げた。
「ふぅ〜」
何時間、こうして踊っていただろう。流石に今日は、息も激しい。
ふと、顔を上げると、視線の先には、最愛な人の姿があった。
「やだ、ジョー。いつからそこにいたの?」
「う・・・うん・・・ついさっき・・・」
「声かけてくれればいいのに」
彼に見られていた事が、少し恥ずかしくなって、タオルで汗をぬぐいながら、彼から視線を外した。
「もう少し待ってて。今、シャワー浴びてくるから・・・」
彼の横を通り過ぎようとした、そのとき、大きな手で腕を捕まれた。
「何?」
顔を向けると、じっと自分を見つめる茶色の瞳にぶつかった。
「どうしたの?ジョー・・・」
普段から、そんなに口が軽い方ではない彼だが、その唇からは、言葉は発せられない。ただ、瞳だけが彼の想いを語っていた。
「・・・ジョー・・・」
少し震えたその唇に、待ちわびていたかのように重なる唇。

踊りの呼吸もまだ整いきれていないフランソワーズにとって、その深いくちづけは、息を荒げるには容赦無かった。
「ジョー・・・・もう・・・やめ・・・て・・・」
唇を解放されて、やっと声を漏らしてはみたが、今度は頬から耳たぶへと、移動していく舌と唇に、全身が熱くなる。
「だめよ、ジョー・・・やめて・・・」
「あ・・・」
舌で首筋を舐め上げられ、思わず発してしまった吐息に、自分でも躊躇する。
「アタシ・・・汗臭いから・・・ね・・・やめて・・・ジョー・・・」
背中に回されていた手が、滑るように前の膨らみへと移動された。
「ダメよ」
慌てて彼の手首を掴む。が、彼の手はすでにやわらかい膨らみを、揉みくだしている。
「ダメだったらぁ・・・ん」
指先が、頂点を見つけ、つまみあげる。
「アアン・・・ジョー・・・ダ・・・メ・・・ああっ」
レオタードの上からでも、その頂ははっきりとその姿を現し、益々彼の指先の餌食となる。
「ね、お願い・・・シャワー浴びて・・・アアン・・からに・・・して・・・アッ・・・」
彼の腕から逃れようと、体をひねらせた。
「だめだよ」
大きな彼の腕から逃れることなど、フランソワーズには、到底無理だった。
「だって・・・臭いわ」
「いいんだ。君の匂いだから・・・」
「でも・・・」
「ボクの上でも踊ってほしい」
「え?」
彼の言葉の意味がよく理解できないまま、露わにされるふたつのふくらみ。隠す間もなく、彼の手のひらは、ゆっくりとその柔らかさを楽しんでいる。
「ああ・・・っ・・・やん・・・」
徐々に膝を曲げ、首筋からその柔らかな上に立つ、堅くそびえる頂に、舌を絡ませ、そして吸いつく。
「あっ・・・はぁん・・・はあ・・・」

ふと、気がつくと、周りに張り巡らされた鏡には、自分と、そして、自分の体に吸いつくように絡まりつく彼の姿が、はっきりと映し出されている。自分のこんな格好を見るのは、初めてのフランソワーズは、羞恥心で全身が熱くなった。
(やだ・・・恥ずかしい・・・・だけど・・・なんだか・・・変・・・)
頭では抵抗しているつもりだったのだが、体の方は、益々、彼の愛撫に応えている。
「・・・ジョー・・・あん・・・本当にここで? ああ・・・っ」
答える代わりに、彼の両手は、フランソワーズのレオタードを剥ぎとっていく。いとも簡単に、生まれたままの姿にされたフランソワーズの肉体は、夕焼けのせいなのか、それとも高揚のせいか、深紅に色を染め、彼の前にと立ちそびえる。
「綺麗だ」
「ジョー・・・」
「・・・君があんまり夢中で踊っているから・・・ボクはバレエにまで、嫉妬した」
「もう・・・ジョーったら・・・」
やっと素直に口を開いた言葉がうれしくて、彼の頭をやさしく胸中に抱く。
「アタシだって、レースに出てるあなたを見てるのは、気が気じゃないわ。危険なのもあるけど、他にも・・・誘惑がいっぱいだもの」
「誘惑?」
「そうよ。あんなに綺麗で悩殺的な女の子が、周りにはいっぱいいて・・・アタシ、心配だもの」
「ああ、だからあんまり見に来てくれないんだ」
「だって・・・」
「一番綺麗で悩殺的なのは・・・君だよ」
「ジョー・・・」
今度は自分から、彼の唇を奪いにいく。音を立てながら舌を絡ませ合い、互いの想いをぶつけ合う。後ろに廻された彼の手が、フランソワーズの太ももから、後ろ側にある、形のいいふくらみを撫で回す。全身が汗ばんでいるフランソワーズの体は、彼の欲望を、更に掻き立てるのには、格好の要素だった。
後ろから前へと手を伸ばし、体の中でも特に濡れた茂みの奥へと、指先を忍ばせる。
「ああんっ」
思わず、腰を引き、膝を曲げるフランソワーズ。
「凄いよ・・・もう、ボクを欲しがってる・・・」
「やん・・・いじわる」
指先で確かめられた泉は、密を滴らせるばかりか、その入り口を大きく開き、侵入者を招き入れる準備をしている。遠慮なく進められた指先は、根元まで滑らかに滑り込む。柔らかくヌルヌルとしたフランソワーズの膣内で、おもしろいように出し入れされる彼の指先は、もはや1本では役不足のようだ。
「アアアッ・・・あん・・・はあ・・・っ」
彼の手の動きに合わせて、自然と腰が前後に移動する。
「ジョー・・・もう・・・おねが・・・い・・・ちょうだい・・・」
懇願するように瞳を潤ませ、フランソワーズは彼の耳を甘く噛む。
「ん・・・ボクも君が欲しいよ」
ジッ・・・と音を立てて、ジッパーを下ろすと、彼の硬くなった固まりは、今か今かと、自由にされる時を待っていた。
「おいで・・・」
フランソワーズの腰に手を置き、静かに、硬い肉棒を茂みの奥深くへと、侵入させる。

根元までしっかりとくわえ込んだフランソワーズは、悦びの声を発する。彼は自分の体を床に横たえると
「ね・・・踊って・・・」
なるほど、そういう事だったのか・・・やっと、先ほど彼が口にした意味を理解したフランソワーズは、彼を喜ばせるためにと、体全身を大きく上下、前後、左右にと動かせる。豊かな胸も、その動きに合わせて、ダンスをする。
「ハァ・・・ハァ・・・・」
「ジョーッ・・・気持ちいい?」
「ん・・・気持ちいい・・・、眺めも・・・ハァ・・・サイコーだよ」
「アアン・・・なんだかアタシ・・・変になりそうっ」
いつもは彼にリードされるままに体を委ねていたのだが、今は彼のもの全てを、まるで自分が握っているかのような、不思議な感覚に捕らえられ、更に激しく腰を動かしてゆく。
ズブッ ブジュッ ジュッジュッ
「アアン・・・気持ち・・・イイ・・・ダメッ・・・アタ・・・シ・・・やん・・・」
「すごい・・・よ・・・ンハッ・・・・フランソワーズ・・・とっても綺麗だよ・・・ハァ」
いつもとは違う感覚に捕らえられて、フランソワーズは無我夢中で腰を動かし、ひとつになった二人の秘部は、淫らな音を奏でる。
自分の限界の奥深くまで彼の肉棒をくわえ込み、意識はやがて全身から膣内の一点へと集中され、熱く脈打っていく。

「ああっ・・・アアン・・・ジョーッ!もう・・・ダメッ!アタ・・・シ・・・アアアッ・・・」
「ボクも・・・一緒だよ・・・く・・・っ」
時を同じくして、昇りつめた二人は、互いの体を強く抱きしめながら、甘くけだるい終演をまどろむ。自分の上に倒れるように覆い被さるフランソワーズの息が、いつもよりもずっと激しい気がする。それもそうか、さっきまであんなに一生懸命バレエを踊っていたのに、それを自分の欲に、必死に応えてくれていたのだから・・・。
肩で息をするフランソワーズの髪を、やさしく撫でながら、肩に唇を寄せる。
「フランソワーズ・・・、大丈夫?」
彼の低い声が耳元で聞こえ、フランソワーズはやっと顔を上げた。
自分に向けられた茶色の瞳は、相変わらず熱く輝いていたが、少しだけ柔らかくなっていた。そして、急に、先ほどまでの自分のしていた行為に理性を戻し、恥ずかしくなった。と共に、自分は果たして、彼の欲求に、上手く応えられたのか、不安になる。
意を決して、おずおずと口を開く。

街はいつしか、紅から、華やかな彩りの、夜の顔色へと変わっていた―――。